I先輩

うーん、ある人付き合いでは有名な方である。

私の中年以降の知性の源泉と呼べる。

 

彼との最初の出会いは意外と古い。

学部2年の時、背伸びして専門の講義を受けていた。まあ、朝からなので眠い。今から見れば大した内容の講義ではないのだが、まだ訓練不足で、よくわからず、必死にノートを取っていた。

二コマ続きの講義が終わった頃、

え、ところで、どうだった?

あ、そう、それならなんてことはない・・・

と、私以上にでかい声で、友人らしき受講者に話す元気な声がする。

顔は見てないが、なんだか、朝から講義受けている人間を小馬鹿にする感じは十分に伝わってくる。

やなやつだな

ま、これが最初の遭遇だったようだ。

 

その後、イッコ上なので、B3年4年は遭遇せず、M1の折、改めて知り合うことになる。時折の厚顔無恥な行動とは別に、我々出来の悪い後輩にはすごく優しく接してくれる。出来の悪い偉そうなやつには、やっぱ時折どうして?!っていうくらい反発して喧嘩してる。見た目はあの教室ではかなり普通の人に見える。ただし、彼の認定するバカに対する評価は常に辛辣である。

 

院生時代は意外と付き合いは薄い、一緒に院生仲間を集めて晩飯食いに行くのが日課ではあった。

 

就職してからは、また優しさを発揮して、僕が

さびしい

って言うと、毎日電話をくれる。*1

おう、〇〇!、元気ぃ?

毎回、出だしは同じである。

一緒に旅行とかも行ってくれた。

一度は旅行先でも僕の鬱が治らず、勝手に帰れって言われたのも懐かしい。彼らしい優しさの表現である。

 

趣味は読書

が、マジで言える数少ない方である。ほとんど、分野とグレードを問わない。

僕が自然科学概論などという、専門外の科目担当で困っていると、それにインスパイアされた書籍を読んでは、僕にくれたりする。

で、そんな本しか読まないのかと言うと、勝手に自分の趣味も読んでる・・・

家は本だらけだろうと予想してお邪魔すると、本は少ない。

基本、本を持たないように全力で努力している、だからお前にあげたりしている。

僕が電話で、自分で探した本を言うと、大体、

うん、その本はおもしろいよ、お前やっぱり偉いね

と、褒められたり?する。

 

まだ、VHSが主流だった頃、見た方がいい映画を順に教えてくれる。

或日、近所の少しスノッブな映画館でたまたま、ビッグ・リボウスキを見て、爆笑したって報告すると、

うん、コーエン兄弟はいいよね。

と、別の映画も教えてくれる。

フランス映画は大抵つまんないよ

なんて、普通の映画好きからは得られない情報が得られたりする。

 

彼自身直接の記憶のない幼少期のエピソードを書いておく。

幼稚園に初めて行って帰ってきた日、親からどうだった?と聞かれ、

幼稚園は勉強しないからつまんないね。

と口にしたらしい。僕も同じことは幼児教育時に感じていたが、僕の場合は知っている人がいないことの苦痛の方が大きかったので、彼のような言葉を口にしたりはしていない。

 

 

*1:その頃の彼の電話代は月10万くらいだったとのこと